ロードアイランド州に住み始めてからは、毎週末、旦那と一緒に車でスーパーマーケットに食料品を買い出しに行くのが習慣となっています。日本では、仕事帰りに駅前のスーパーに立ち寄り買い物することが多かったので、この「1度に1週間分」というアメリカスタイルに慣れるまでは試行錯誤の繰り返しでしたが、家から徒歩圏内に生鮮食料品を売っているスーパーがないこと、冷蔵庫・冷凍庫が大きいことから、今ではすっかり週1グローサリー習慣が定着してきました。
私達は車で10分以内の“Whole Foods(ホールフーズ)”へ通っています。(店の名前を訳すのが難しいのですが、本来の自然そのままの食べ物・・といった意味合いでしょうか)
アメリカのオーガニック(有機栽培)ストアの代表格でもあるWhole Foodsは、野菜や肉・魚類の鮮度は抜群です。また、生物以外の食料品からシャンプー等の日用品に至るまで、独自ブランドである「365」を立ち上げていますが、質も高く安心して購入できます。
さて、このホールフーズ。店内に入るとすぐに目に飛び込んでくるのは、色とりどりの野菜や果物が並べられ、さらには生花も加わり、町のFarmer's Marketに迷いこんだかのようです。
店内では、店員さんが木箱から野菜を取り出し丁寧に並べている様子に出くわすことがよくあります。この「○○Farm」とプリントされた素朴な木箱は、この野菜が近隣の農場から朝に収穫され直送されてきたかのような印象を与えます。しかし、実はこの木箱は、店内ディスプレイ用にNYの大手デザイン会社が特別にデザインしたものであり、実際には労働力の安いメキシコを含めた世界各地様々な農場より業務用段ボール箱で運ばれてくる野菜を、裏の倉庫で「ナチュラルな木箱」に移し替えているのだそうな・・・。「ナチュラル」なブランドイメージは必ず"自然に"作りだされるものではなく、都市のクリエイティブマインドと資金力、そして労力を必要とするものです。
他のスーパーチェーンより商品の値段は少々高めですが、前述のようなイメージ醸成にも長けており、Whole Foodsで買い物するという行為が「ヘルシーでエコなライフスタイルを送るスマートな消費者」といった一種のステータスともなっています。買い物するにも何をするにもダイナミックな(?)大多数のアメリカ人消費者の既存の価値観とは明らかに異なります。そのため、Whole Foodsのスタンスは"pretentious"(見栄を張った)といった風に解釈されることもあると聞きます。しかし、私のようなアメリカに移り住んできたばかりの日本人にとっては、日本のスーパー並みの清潔さと細やかさに既視感を覚えるほどで、私の周りでも日本人愛用者は多いです。
さて、「エコ対策」というと、日本の各スーパーマーケットによる環境への取り組みとして真っ先に取り上げられるのは「レジ袋削減」ではないでしょうか。エコバッグ持参を推奨する様々なインセンティブを用意したり、レジ袋有料化といった措置が取られています。
一方アメリカでは、レジ袋にあまり関心が払われている気配はありません。Whole Foodsではデザイン性・機能性の高いエコバッグが売られており、比較的配慮されている方ですが、かといって、それ以上の消費者への働きかけはありません。
では、何を持って「エコ」を掲げているのでしょうか?
Whole Foodsで買い物をしていると、店の代名詞ともなっている「オーガニック」商品を始め、商品(特に野菜、肉、魚)の生産過程がいかに「環境に負荷をかけず」「持続可能」であるかといった点が強調され、売り場で消費者に積極的かつ透明性の高い情報提供活動を行うことにより、より“エコ”な商品を購買するように促す試みが見られます。例えば、魚は原則的に持続可能な漁業を推奨する海洋管理協議会(MSC)という第三者機関により課せられた条件を満たし、認証をうけたものを販売するなど徹底しています。
日本でのレジ袋削減への熱心な取り組みを見てきた自分としては、Whole Foodsでせっせと「エコな消費者」としての務めを果たした後で、大量のレジ袋を消費していくお客さんを見ては、何だかやりきれないなぁと思うこともあります。しかし、人口70億人を突破した地球において、「食の安全・安心」はもちろんのこと、地球の成員に日々必要な摂取カロリーを供給していけるかという「持続可能で安定的な供給」が喫緊の課題である中で、商品の生産過程という、普段消費者からは見えない暗部にあえて目を向けさせるWhole Foodsの姿勢には共感を覚えます。
もちろん「オーガニック」を謳っていても大規模チェーンの営利企業なので色々と批判もつきものなのですが、個人的には今後もWhole Foodsの取り組みに注目すると共に、購買行動を通じて応援していきたいと思います。
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